n回目の人生

フィクションを交えながら日記を書きます。

寄る辺なき寂しい感覚はそう嫌いじゃないんだ、不思議なことに

車で15分も走ると熊が出そうな山に近い道までドライブができるのは、この街の長所として愛すべきポイントだと思っている。

だだっ広くじゃがいもだか牧草だか、はたまた白菜なのかネギなのかわからないけれど農地が広がる真ん中に海へ向かって伸びるアスファルト。街灯はぽつんぽつんと数えるほどで深夜0時にもなると、街の灯りもおとなしくなり(もっとも、ここ1年はコロナでいつだっておとなしい)、まっくらな空間のなかに私と星と空と海と土。かろうじて重力はあるけれど、暗すぎて平衡感覚を失うかのごとく、だ。

 

たまに、星を見に行くんです。

 

そう話すと、「一人で?」と聞かれることが多い。そう、一人で。「怖くない?」怖い、けどその怖さは嫌いじゃない。この地球の上に、まるで自分だけが存在しているかのような、寄る辺なき世界の中でのゾクゾク来るような寂しさ。人はそれを恐怖と呼ぶのかもしれない。どこにも、正しく帰れる場所を持たない自分、だからなのか、そんな自分が許されるような気になるの、か。気楽さと寂しさが同居するような感覚で。そこに座り続けて朝がくるのを見届けたいような気分。